漢越語とは、明治期以降に、ベトナムの知識人層が、日本語を通してベトナム語に導入した新しい言葉です。
例えば、法律=pháp luật 管理=Quản lýなどです。
日本人がベトナム語を勉強する際に、「どの言葉が漢越語なのか」を意識して勉強する事は、ベトナム語の言葉を覚えるのにとても役立ちます。この点に関しては、漢越語の総論に関しての記事をご覧下さい。
この記事では、総論の記事に続いて、「漢字の音読みに基づいて、漢越語のスペルを覚える方法」に関して紹介したいと思います。
上で書いた様に、「漢越語とは、日本語を通してベトナム語に導入した新しい言葉」です。そして、ベトナム語に導入する際には、ある程度の規則性を持って、日本語からベトナム語に置き換えられました。
このため、日本語の読みとベトナム語の漢越語のスペルには、一定の対応関係があります。
ちなみに、ここで、「日本語の読み」という場合には、音読みのみを指しています。例えば、明という漢字では、訓読みは、「あか(るい)」で、音読みは、「めい」です。国という漢字では、訓読みは、「くに」で、音読みは、「こく」です。
対応関係その1:ngで終わる漢越語
ngで終わる漢越語→日本語の読みは、「う」が対応します
具体例をあげます。下線部が、対応関係を示しています。
漢越語 | 日本語 | 音読み | 注釈 |
---|---|---|---|
thông thường | 通常 | つう・じょう | |
công cộng | 公共 | こう・きょう | |
đồng ý | 同意 | どう・い | |
trung tâm | 中心 | ちゅう・しん | |
trọng lượng | 重量 | じゅう・りょう |
対応関係その2:nhで終わる漢越語
nhで終わる漢越語→日本語の読みは、「い」
具体例をあげます。下線部が、対応関係を示しています。
漢越語 | 日本語 | 音読み | 注釈 |
---|---|---|---|
chính xác | 正確 | せい・かく | |
chính trị | 政治 | せい・じ | |
phát minh | 発明 | はつ・めい | |
thông minh | 聡明(頭が良い) | そう・めい | 前は対応関係1 |
「nh」と「い」が対応しているのが分かります。
対応関係その3:nで終わる漢越語
nで終わる漢越語→日本語の読みは、「ん」
漢越語 | 日本語 | 音読み | 注釈 |
---|---|---|---|
chuẩn bị | 準備 | じゅん・び | |
công viên | 公園 | こう・えん | 前は対応関係1 |
tiên tiến | 先進 | せん・しん | |
nghiên cứu | 研究 | けん・きゅう |
対応関係その4:ưで終わる漢越語
対応関係その4:ư→日本語の読みは、「や行」
漢越語 | 日本語 | 音読み | 注釈 |
---|---|---|---|
nghiên cứu | 研究 | けん・きゅう | 前は対応関係3 |
lưu ý | 留意 | りゅう・い | |
dự định | 予定 | よ・てい | 後ろは対応関係2 |
nhược điểm | 弱点 | じゃく・てん |
注意点
ただし、上記の対応関係を理解する上で、注意点があります。それは、「この対応関係は、「漢越語のスペル→日本語の読み」を推定する際の法則を示しているが、その逆の「日本語の読み→漢越語のスペル」を推定するための法則にはなっていない、ということです。
例えば、けんきゅう→nghiên cứu、ですので、対応関係1の逆の関係は成立していません。
番外編
漢越語の中には、韓国語を通して理解すると分かり易いケースがあります。
番外編:mで終わる漢越語
漢越語 | 韓国語 | 日本語 | 音読み |
---|---|---|---|
cảm động | カム・ドン | 感動 | かん・どう |
kim | キム(キム総書記) | 金 | きん |
cấm | クム | 禁 | きん |
tham | サム(参鶏湯 サムゲタンのサム) | 参 | さん |
mで終わる漢越語は、日本語では、「ん」になりますが、nの場合も日本語では「ん」に なりますので、対応関係が見えにくいですが、韓国語では 「m→む」という関係が維持されています。
現代の日本語では、末子音としての「む」の音が無いのが原因と思われます。