漢越語に関する総論

日本人がベトナム語を勉強する際に、重要な要素の一つに「漢越語」があります。漢=漢字、越=ベトナム語ですから、これは、「漢字を元にしたベトナム語の単語」という意味です。もう少し詳しく説明すると、「明治期に、ベトナム人の知識人層が、西洋で発達した近代的な概念、用語をベトナム語に取り入れるために、日本語を通してベトナム語に導入した言葉」という事です。

例えば、「社会」という言葉は、society という英語の言葉に対する訳語ですが、もともと、日本人が、明治期に創作した言葉です。中国語から日本語に輸入された言葉ではありません(それに対して、「皇帝」という言葉は、中国語から輸入された言葉です)。もともと、日本語にも、中国語にも、society に対応する概念や単語が無かったので、新しく作るしかなかったのです。

そして、明治期には、中国は、国力が衰退しした状態でしたので、この時代に、アジアで、西洋から近代的な西洋で発達した近代的な概念を取り入れるのは、日本が中心となって行いました。

そこで、中国周辺の、漢字文化圏の国では、「一から自分たちで用語を創作する」事はせずに、日本語を通して、これらの概念、用語を取り入れることにしたのです。

そして、ベトナムは、現在では漢字は使われていませんが、中国からの文化的な影響は強く、以前は漢字が使われていましたので、ベトナムでも、同様に、日本語からの用語の導入が進みました。フランス植民地時代までは、ベトナムの知識人層は漢字を使っていたのです。

漢越語の具体例

では、漢越語の具体例を見ていきましょう。

1 pháp luật 法律

2 phương pháp 方法

3 quốc gia 国家

4 quốc tịch 国籍

1と2から、pháp=法という対応関係が分かり、

3と4から、quốc=国という対応関係がわかります。

この様に、ベトナム語の単語を構成するパーツを漢字に置き換えて考える事が出来るのが、漢越語です。

漢越語と同音異義語

漢越語を勉強する際に、知っておくと役に立つのが、「日本語で同音異義語である言葉は、漢越語は同じスペルになる事が多い」という事です。

たとえば、

tham gia 参加という漢越語があります。

tham=参 gia=加という関係になります。

ここで思い出して欲しいのが、先ほど説明した、quốc gia 国家という漢越語です。

gia=家(か)という関係です。

gia=加(か)と合わせて考えると、「日本語で同音異義語である言葉は、漢越語は同じスペルになる事が多い」という意味がわかると思います。

ただし、スペルは同じでも、声調記号は異なる事も多いです。

これは、全ての場合に当てはまるルールではないのですが、漢越語を身につける際には訳に立つので、頭に入れておくと良いでしょう。

漢越語かどうか微妙な言葉(狭義の漢越語、広義の漢越語)

一方、越南は、中国からの影響を 2,000 年近く受けており、この期間を通して、中国語から、色々な言葉を受け入れて来ました。このため、ベトナム語の中には、「明治期に日本から入ってきた漢越語」ではなく、「それ以前の時期に中国から入った言葉」が存在します。具体例をあげます。

eo=腰

腰は、音読みではヨウですから、「eo=ヨウ」という事で発音が近いのが分かると思います。

そして、「明治期に日本から入ってきた言葉」のみを漢越語として考え、「それ以前の時期に中国から入った言葉」は漢越語ではないと見る事もできますが,別の考え方としては、

「明治期に日本から入ってきた言葉」=狭義の漢越語、
「それ以前の時期に中国から入った言葉」=広義の漢越語


と見る事も出来ると思います。

漢越語の活かし方

では、ベトナム語を勉強する際に、漢越語は、どの様に活かせば良いでしょうか?

1 まずは、漢越語である言葉を覚える際には、その言葉が漢越語である事を意識して、漢字と発音の関係を覚えましょう。
2 次に、新しい単語に遭遇した時には、既に覚えた漢越語を基にして、意味を考えましょう。

例えば、

nguyên nhân(原因)、báo cáo(報告)という漢越語を覚えれば、

nguyên=原 cáo=告ですから、

nguyên cáo は、原告、つまり、裁判で訴える側の人だと分かります。

漢越語と辞書

どの言葉が漢越語で、どの様な漢字に相当するかという事に関しては、辞書では、見出し
語の後ろに、括弧の中に書かれている事が多いので、初級段階では、辞書を引く時には、
毎回確認する様にしましょう。ベトナム語の勉強になれてくれば、辞書を調べなくても、
自分で想像できる様になってきます。

ただ、スマホのアプリの辞書では、漢越語との関係は書かれていない事が多いと思います
ので、やはり、初級段階では、紙の辞書を使った方が良いと思います。五味正信先生の
「学習用ベトナム語辞典」、川本邦衛著「詳細ベトナム語辞典」などです。

漢越語でしり取り

漢越語を復習する方法として、自分の頭の中でしり取りをやってみるという方法があります。

例えば、
quốc gia(国家)→gia đình(家庭)→định nghĩa(定義)→nghĩa vụ(義務)などです。

同音異義語で、スペルは同じで、声調記号は、同じものとして扱いましょう(あまり厳格にやると、続かなくなりますので)。

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